北の椅子と ショップ便り・お知らせ

北の椅子と 便り

北の椅子と 便り 201512

今年もやってきました師走。
暖かかった秋を吹き飛ばすように北風が吹いて、ストーブ恋しい冬がやってきました。
北欧の品々を扱う店ではありますが、相方も私も寒いのを苦手として、家にこもってばかりおる冬を過ごしがちです。
ところがこの師走はあちらこちらへ走り回る予定。
デンマークから入荷するコンテナを迎えたり、阪神競馬場で行われる関西蚤の市に出かけたり、 師走の百貨店なんて何年も縁遠かったのに阪神百貨店梅田本店の北欧市にもでかけたり。
和田岬の店を開けて3年目、足を運ぶには便利と言えない私たちの店にお越しいただくお客様には感謝しつつ、なかなかこちらまでお越しいただけないけれど、気になってくださっている方々のお声にもこたえたくもなり、ちょっと遠征。
遠征先でも私たちらしさが表現できたらよいな、と思います。
人の混み合う中でも、街なかでも。
北欧ヴィンテージの豊かで、どこかほっこりと寛ぎのある品々とともに 北の椅子と らしくありたいと思います。
お見かけいただけましたら、是非お声かけください。
何処かでお目にかかれるのを楽しみに。

2015年12月 北の椅子と 服部 真貴 

北の椅子と 便り

北の椅子と 便り 201511

先日は15時のご予約でお誕生日会が始まった。お誕生日会をしていただくようなプランは持ち合わせていないのだけれど、
喜びの一席を私どもの店で祝おうと考えていただけたことが嬉しく、その予約にできる限りの事はしたいと思ったスタッフ。
美味しそうなケーキプレートができていた。祝いの席におしゃべりの花が咲き、お客様が笑みで礼を述べられ店を出られて
こちらもホット一息。
見上げれば、大きな月が出ていた。
閉店時間が18時と早いので、夏場はまだお日様高く、仕事を納め帰路について良いものかと思うときがある。
ずんずんと日が短くなり、今ではすっかり暗くなってからシャッターを下ろすとともに、毎日月を眺める。
晴れた日も多くて、怖いくらいの美しさを見るときもあれば、ニヒルな笑い目のような月を見るときもある。
これからもしばらく、日が落ちてからの営業時間があるけれど、昼間は見れない照明の影も鮮明になり、
デンマークヴィンテージ照明の影の美しさがよくわかる。
陰影こそ照明の美しさ。
是非体感ください。
カフェは相変わらずの16時でラストオーダーをいただいておりますが、18時までゆっくりしていただけます。
照明が本領を発揮する時間、お帰り道は月明かりに照らされて、少し心軽やかに家に向かっていただければと思います。

2015年11月 北の椅子と 服部 真貴 

北の椅子と 便り

北の椅子と 便り 201510

先月の中ごろ、北の椅子との定休に場所をお貸しすることとなり、神戸市の公園緑化協会のイベントが行われた。
「KOBEもりの木プロジェクト」による、ワークショップとミーティング。
その間に北の椅子とのランチを挟ませていただいた。
六甲山系の間伐材の活用方法を考え、利用の道筋を整えていくプロジェクト。
このイベントを機に私もいろいろと学ばせてもらえた。
日本の国民病のようでもある花粉症の原因にもなっている杉ではなく、早くから様々な広葉樹の植林を続けてきた六甲山系。
森の手入れを怠っていることで保水力を失い地崩れにつながったり、若木に日があたらず光合成、二酸化炭素の吸収が妨げられたり。
その広葉樹の森の手入れ、活用のために、発足されたプロジェクト。間伐し、それを運びだし、利用する。
現在は倒木していても、その使い道もなく、運び出されることもないまま放置され、荒れているところも多い。
間伐にも運び出しにもその後の活用にも、かかる資金をその間伐材から生み出す道筋をつける。活用しなければ、ただただ燃やされてそこにも資金が要り、二酸化炭素を発生させることになる。
ところが、これが杉植林と違って、多種多様の広葉樹。桜だ、栗だ、赤松だと、私たちの店に併設する製材に届いた時には思わず苦笑いした。
太さ固さもバラバラで、曲りあり、節ありの個性的な木々。
今回のイベントではカッティングボードにしたり、スツールにしたり。これからきっとまた暮らしの中でストーリーを育めるだろうと思える、作り手の個性のひかる道具となった。
ミーティングでは今後の活用方法の一つとして、「こうべ、マイカレー皿運動」なんて楽しいものも出てきていた。神戸の人と言えば、マイカレー皿を六甲の木から作って使っているという定説を作ると。
さて、これからどんな活用方法を考えていくか。
今月の広報KOBEでは【木質バイオマス】の活用を新たなエネルギーとして、市が謳っていた。
「神戸の街は煙突がある家が多いんだよ」っていうサンタクロースも喜びそうな都市伝説ができればそれは素敵だと思うけれど。

北の椅子とから六甲山の森林植物園までは車で30分かからないくらい。
とても気持ちの良いところなので、私たちも家族でよくのんびりしにいきます。
お客様に伺うと、登山をする人あり、縦走する人あり、コテージを営む人もあり。
とても身近な自然のこと。身近な暮らしの中のこととして考えていきたいですね。

2015年10月 北の椅子と 服部 真貴 

北の椅子と 便り

北の椅子と 便り 201509

寝苦しかった夜がうそのように、夜の虫の声が楽しく、あれが啼いたこれが啼いたといっている間に眠りに落ちる。

この夏は海に入る機会を逃し続けて、やっと八月も終わりの土曜日、徳島にいつものお米をいただきに伺うついでに阿南の北の脇海水浴場へ寄り道した。
天気が悪かったのもあってか、人はまばら、水も冷たかった。
そして、夏の終わりにふさわしく一軒だけ海の家が営業しており、その風化の具合と営業する家族の笑顔が感じよかった。
少し肌寒い曇り空だったけれど、息子は砂にまみれ、塩水にもまれ、小一時間があっという間にすぎて、気が付けば唇が青ざめていた。
大人になって、山の良さにも気が付けたけれど、私も子どものころはもっぱら海っ子で、夏はもちろん、春の海も、秋の海も、そして冬の海さえ何時間でも過ごせた。
震災前には須磨の駅前に祖母の家があり、小学校の低学年のころまでは祖母の家で水着に着替え、そのまま駅を突っ切って海岸に出て、帰りはまたびちょぬれのまま駅を突っ切って、庭先のホースで水を浴びるような夏の毎日だった。
祖母の家を思い出すと、土間に散らしたざらざらとした砂の感触と、日に焼けた畳の匂い、冷え切らない濃い麦茶の味。
夏の風景ばかりがよみがえる。

徳島は米の収穫を終えた田が多く、生産者市場ではスダチや鳴門金時が山のように積まれていた。
一足先に、北の椅子とでいつもお世話になっている岡部さんの新米をいただくと、やっぱりとてもおいしい。
今年も田植え時だけのお薬でお願いした減農薬栽培のコシヒカリをトラックに乗せた帰り道、気分はもうすっかり秋になった。

喫茶部ではかぼちゃのタルトが香り良く焼けている。
ランチタイムには限定ではあるけれど、カレーやホットサンドに加えてもうひとメニュー、その日の気分のプレート定食が仲間入り。
とろふわのオムライスだったり、お野菜と酢鶏だったり、豚肉のしょうが焼き定食だったり。
そして、月末のルスカフェア―に向けても準備進行中。ルスカの魅力を存分に伝えられるよう、食欲の秋も進行中。
ご期待ください!

2015年9月 北の椅子と 服部 真貴 

北の椅子と 便り

北の椅子と 便り 201508

毎朝、起き抜けに顔も洗わず玄関に駆けていき、虫かごと網を持った息子に、「早く!いくで。」と誘われる。
まだ殻を脱ぎたてで、弱々しい羽根でもお構いなし。
網も持っているけれど、低い幹にとまるそれを手づかみで。
そして、じりじりと高いところに上がっていくものを狙う。
いつの間にか、上手になったものだ。
抜け殻ハンターは、本物のセミハンターになった。

上手な捕獲の仕方、種類やオスメスの区別、そしてリリースまで。
公園の先輩たちは、口数少なく教えてくれる。

 

大雨が続いたかと思ったら、猛暑日続きの毎日がやってきた。
店先に水をまいてもあっという間に乾いてしまう。
エアコンのない売り場では、思わず「暑くてすみません!」と思わず頭が下がる。
今年はリクエストの多いかき氷もご用意して、夏を過ごそうと思います。
ゆるいクーラー、冷たいコーヒー、読みかけの本をお好きな椅子で。ぜひどうぞ。

2015年8月 北の椅子と 服部 真貴 

北の椅子と 便り

北の椅子と 便り 201507

いつの間にか芙蓉の花が咲いている。
神戸では曇りの日も多いからか、例年より涼しく過ごせていて、7月の夏らしさがないようにも思う。

6月の店はゆっくりと過ぎ行き、家での仕事も少なく、いつになく映画(と言ってももっぱら夜中のDVDなのだけれども)が観れたり、本が読めたりした。
何を観て、何を読んだか振り返るともっぱら食に関するものが多く、食い意地が張っているというかなんというか、自らの興味の方向を改めて感じた。
食のこととは、調理のことより素材のこと。
我が家のダイニングテーブルには、料理というほどの何ができるではないので素材勝負な皿が並ぶ。
幸い、家から車で10分も走ると、作り手が丹精した新鮮な地の野菜や須磨や垂水からあがる昼網の魚が並ぶマーケットがある。
兵庫駅の北側でも、北区淡河の農家の直売所が日を置いて立つ。
今はトマトやキュウリ、バジルや枝豆が所狭しと並ぶ。
先日、神戸市役所の南側公園の東遊園地に神戸市の主催でファーマーズマーケットが開催された。訪れると、生産地と街が近い神戸らしい、豊かな試みのように感じた。
参加されている農家は皆若手で意識が高く、私も勉強にもなり、そして何よりおいしかった。
また別の日には、店で契約している無農薬の野菜を作る農家の、草引きを息子と手伝いに行った。
農家のお兄さんが草引きが終わったところに撒いた、米ぬかとおからを発酵させた自家製肥料の糠床のような匂いに、息子は嫌な顔もしていたが、虫を追い、好物のトマトを好きなだけ採らせてもらい、帰りの車では次回を楽しみにしていた。
街に住みながらにして、海も山もすぐそばにあり、少し行けば田畑がある。ありがたいこと思う。
そうして過ごした月末、ロスから主人が戻った。息子とともに関空へ迎えに行き、帰りの車で話を聞いた。仕事の話を2割ほど。あとの8割、食の話だった。

話は大きくなってしまうけれども、
私たちの扱うヴィンテージ家具は物質の循環が目指すところであり、木の家具を通して自然を身近に置く暮らしの提案ができればと思っている。
食は大地の循環を目指しており、食を通して自然はより身近になることを改めて感じる日々。
幸せな食卓がずっと続くことを願いながら。

2015年7月 北の椅子と 服部 真貴 

北の椅子と 便り

北の椅子と 便り 201506

店のうえの大きな蛇口。
いえ、蛇口ではなく実際はおがくずのサイロなのですが、店の目印として「赤茶色の倉庫屋根に大きな蛇口が上に乗っている」とよく言われます。
その今は使われていないおがくずサイロで今年はスピースピーと啼く、スマートできれいな鳥の夫婦が子育てを始めました。
こちらとしては暑くないのかとか、中に落ち込まないかとか心配でならないのですが、店の前の木々が切られてなお、鳥の声がきこえるのはとても嬉しく、水場を小さなカップでつくり様子を眺めています。

季節がまたひとめぐり。北の椅子ともオープンして2年が過ぎました。
おかげさまのまいにち。
先日北の椅子とで開いたsujahta 上田さんと Beyond Coffee Roasters 木村さんのグッドコーヒーMTGでも話題に出ていたけれど、良いお客さんに恵まれると続く店にしようとか、よりよい店にしようとか、おもう。
またこのお客さん来てほしいな、が原動力。そして、しばらく見ない顔があると、どうしていらっしゃるかと気になり、もっと長く間があくと、前回のご来店で失礼があったかと心配になったり。
そして、7年お店が続いている上田さんは、「何か新しいことしたいんですよねー。」とよくいっているけれど、素敵なお客様に囲まれているから、きっとsujahtaはやめられずにいる。
私たち北の椅子ともいつの間にか7年が経ちました、とか10年目を迎えましたとか言えたらよいなと思いながら、ちょっとだけ先のことを想像して、こんなこと店でしたいねとか、こんな提案できるといいねとか、小さな変化をしながらかたちにしていきます。
親鳥になって戻って来る鳥が、ここで来年もまた次の年も子を育て、巣立ちの時を迎えられるように。

2015年6月 北の椅子と 服部 真貴 

北の椅子と 便り

北の椅子と 便り 201505

今年も駐車場の軒でスズメたちが子育てをはじめた。
賑やかな雛たちの声と、親鳥のあわただしさをぼんやり眺め、今日も元気にいることを確認してから家を出る。

4月から北の椅子とで開催している【香りの時間】の講師を務めてくださっている中島さんが淹れてくれたハーブディをのみながら 思うことがありました。子どものころのままごとで雑草を摘みすり鉢でつぶし、水を注いでお茶にしていたことを。注いでいるのが水なのに、むせ返るような青臭さをお薬にも見立てていたことを。その記憶から、ままごとの一場面の詳細が走馬灯のように駆け抜け描かれました。
中島さんの淹れてくれたハーブブレンドはドライだったので、青臭さもなく、口に広がる香りと甘みがなんとも幸せな一杯だったのですが、いつも家で飲むパックされたハーブティーとはまた別のもの。自然な香りに子どものころのままごとにつながったのでしょうか。

香りを表現し文章とするのは難しく、その文才はないのですが、香りは記憶を呼び起こす引き金になることがよくあります。
息子の通う保育園で、保育士さんが名前の消えた落し物があると、匂いを嗅いでいます。
子どもの匂い、その背景にある家庭の匂い。
今は消臭剤や、フレグランスで家の匂いがわかりにくいような気もしますが、目隠しされて鼻を頼りに後ろの人がわかった子どものころ、家庭の匂いはより個性的で、今思えば豊かだったのかもしれません。
店でも朝淹れるアイスコーヒーの甘い香り、玉ねぎと月桂樹の葉を炒める食欲をそそる香り、製材の後の清々しい香り、家具の引き出しを開けた時の以前の持ち主の香り。様々な香りがまた何かの記憶につながるときが来るのでしょう。

2015年5月 北の椅子と 服部 真貴 

北の椅子と 便り

北の椅子と 便り 201504

柳の若葉が手を開く、銀杏の若葉も手を開く。
あっという間に桜が咲いて、ほわほわの春が来た。

先月はコンテナがついたり、店の設備不良があったり、皆の体調が整えにくかったりで、いつの間にかひと月が過ぎゆきました。
気が付けば、別れの季節の余韻に浸る間もなく過してしまっておりましたが、息子の通う保育園でも卒園式にそれぞれの子の成長をみて涙した日がありました。
小さな園で、保護者も一言ずつ別れの言葉を話すのですが、皆それぞれに愛にあふれ、その言葉を聞きさらに卒園児一人ひとりを愛おしく見送りました。
そんな時にいつも頭に浮かぶ短編があり、久々にまた読み返してみました。
有島武雄の小さき者へ。
この短編が高校2年生の時、友人同士で一大ブームになりました。
今とは全く違った感情でそれを読んでいたことと思いますが、最後の一節が私たちの中で流行言葉になったほどでした。

店にいると、よく来て下さるお客様の子どもたちの成長が見ることができ、とても嬉しく思います。
おなかの中にいた子を次の来店には抱っこさせてもらえたり、ソファーで寝転がり天井ばかり見上げていた子が、自分の足で階段を上ってくるようになったり。
それぞれの子どもたちとお父さん、お母さんとのやり取りに学ぶこともしばしばです。そして、我が子を見る愛しいまなざしにうっとりすることも。
子どもたちにとっても、そのご家族にとっても、新しいこともきっといろいろとある4月ですね。
ご自愛のうえ。

行け。勇んで。小さき者よ。

2015年4月 北の椅子と 服部 真貴 

北の椅子と 便り

北の椅子と 便り 201503

さむいさむいと背を丸めて下ばかり見ていると、
アスファルトの隅っこから柔らかい緑がふくふくと出ている。

公園に出かけると、梅が満開で、
実家の山の方に出かけると、つくしのあたまがひょこひょこと。

思わず背筋が伸びて、日に顔を向けたくなる。


店に家具を見に来て下さる方にも、この春からの新生活、新店舗の準備をされている方が多く、
期待感が伝わり、お話を伺うこちらも楽しくなる。
私たち北の椅子とにも、間もなく次のコンテナがつく予定で、新しい仲間を迎える準備を進めている。
キッチンからは春からのメニューに向けて、甘酸っぱいにおいがしてくる。

それぞれの春。
背筋を伸ばして前へ一歩。

2015年3月 北の椅子と 服部 真貴 

北の椅子と 便り

北の椅子と 便り 201502

朝起きるとき、夕方店を閉めるとき、仄明るくなり嬉しくなる。
足元を見ればアスファルトで閉ざされた道からも、緑が這い出し、
落葉した素っ裸の木の枝の先はまだ固いけれど、ふくらみができている。

とはいっても、吹く風は冷たく、洗濯物も乾いているのかどうかもわからない。
神戸でさえ雪が舞う日もある中、1月はゆっくりするだろうと思っていた店内はありがたいことに想像していたより賑やかだった。
店内静かかと想定して企画した座話会の席に、どっしり腰を落ち着けられないことは残念だったが、どの会も話に花咲きとても楽しかった。
話題は、食の事、子育てのこと、仕事のこと、今朝見たニュースの話題・・・
しっかり手を動かし、口も動かし、すっきりとした顔で帰路につく。

こうして文章を書くことや、取材を受けたり、メニューを作ったり、お客様と家具の話をしたり、どちらかというとアウトプットを求められることが多い私には、 様々なところへ出向いたり、本を読んだりしてインプットする時間を取ることはとても大切なこととなるのだけれど、今回の座話会のように仕事とは関係のない話を聞けることはとても有意義だった。
2月も続きます。よろしければ足をお運びください。

2015年2月 北の椅子と 服部 真貴 

北の椅子と 便り

北の椅子と 便り 201501

あけましておめでとうございます。
本年も皆様にとって健やかで佳い年になりますよう。

昨年のまだ寒さと暑さが交差する頃に、兵庫駅の南側広場で、通りすがりの人々が口をあんぐりとあけて 上を向く朝があった。
皆が見ていたのは、植木職人。
そう、まさに職人だと思った。
楠に初めの数メートルは梯子をかけていたとしても、その上は腰に巻かれたロープ一本でするすると登り、 ばさりばさりと伸びた枝葉を切り落としていく。
その木登りも、剪定も、見とれんばかり。なので、木の下には見物人たちの輪っかができていた。
そして、数か月たち新しい枝葉がのびている。
あぁ、きれいだなぁと見上げる。

この頃は、こうした広場でも重機を使って枝落としをするところがほとんどではないだろうか。
重機が通った後の木々の切り口が痛々しく、目をそらしたくなるような気持ちになるのは私だけではないと思う。

職人の仕事は見ていて楽しい。
そういえば子どものころ、父の仕事について工場に入り、箱うちのおじさんたちの整理された道具とその扱いに見惚れ、 邪魔になるよ、危ないよと、言われながらも工場に入るたびに見続けていた覚えがある。
北の椅子と では北欧の職人たちが今から50年以上前に作った家具を扱っている。
それをばらしたり、組み直したり…またしばらく現役で役に立てるようメンテナンスをするのだけれども、 そのメンテナンスのスタッフは、毎日その職人技を目の当たりにし、勉強している。
どんな仕事もそうかもしれないけれど、その道を究めた手の動きは本当に美しい。
そして、その職人たちの残した仕事はとても、美しい。

私たちは一からモノを作り出す職人ではないけれど、その職人が残したものを次の使い手に伝える役目を担っている。
残していきたいもの、伝えていきたい暮らし方、大事にしたい質と品・・・

2015年、北の椅子と はお客様、スタッフともに学び、伝え、感じられる場になれるよう、努めてまいります。
どうぞ、よろしくお願いいたします。

2015年1月 北の椅子と 服部 真貴