北の椅子と ショップ便り・お知らせ

北の椅子と 便り

北の椅子と 便り 201311

いつもなら、デンマークにいて、長い夜を過ごしている頃。
今年は店を開けたこともあり、メンテナンスが混み合いすぎてお客様をお待たせしていることと、現地の仕事仲間との都合がうまく合わず、今年は買い付けを2月に延期しています。

気候がよく、なんだか人々も陽気な夏の買い付けにくらべると、
寒くて、店が開いている時間も短い冬の買い付けは、つらいものです。

でも、12月に滞在していると、公園にもみの木屋さんが出たり、
クリスマスマーケットが各地で開かれたり、賑やかに楽しくなってきます。
賑やかに楽しくなっては来るのですが、日本のそれとはやっぱり違う。
生活に根ざしていて、うまくは表現できませんが、じんわりと
楽しんでいるような感じです。
信仰からくるお祝いですから、厳かな雰囲気もあります。

家々の窓が飾られキャンドルがともされたり、家族や友人に向けて、
ちょっとしたプレゼントを選ぶ姿が見られたり。
街の飾りも色がすくなくシックです。

友人に招かれ、クリスマス前のお宅にお茶にお邪魔しましたことがあります。
お茶とはいえ、昼の三時には日がくれるので、ほの暗いアパートメント。
我が家と同じように子どもがいる家族ですが、小さなクリスマス飾りが所々に配され、落ち着いた空間です。
スパイスや果汁を加えて作る、クリスマスホットワインを飲み、Aebleskiverというパンケーキの味のたこ焼きのような形の伝統のお菓子をいただき、小さなプレゼントを交換。
決して華やかではないけれど、満たされた時間についつい長居してしまいました。

こうしてクリスマス前のお茶の時間をゆっくり友人と過ごし、 当日は家族で静かにクリスマスを祝う。

別れを惜しんで友人宅を辞したあと、ホテルまで小一時間の道を歩きました。
それぞれに飾られた窓や、ドアにかけられたリースを、そして、 豊かな午後の余韻を楽しみながら。

2013年12月 服部 真貴 

北の椅子と 便り

北の椅子と 便り 201311

趣味という趣味を持たず、時間をむりくりつくってしたいことと言えば、
読みたくてそのままになっている本の山を低くすることくらい。
そんな私の周りには、朝4時に起きてでもバイクに乗りに行く相方がおり、
週末ごとに琵琶湖に出かける父がおり、山小屋ステイで上を目指す友人がいる。 そして、彼らは皆、すっきりした顔で仕事に向かっている。

見習いたいと思う。

「じいちゃんのおふねにのりたい」という息子に誘われ、
父のいる、琵琶湖のヨットハーバーを目指した。
父も歳をとり、潮風が身体にきつく、後始末も淡水の方が楽だからと
週末ごとに神戸から堅田まで片道一時間半を電車で通う。

「ここの景色は北欧を連想する」と、一緒に行った友人がつぶやいた。
そういえば買付に訪れるデンマークは、大陸からの半島と、内海に浮かぶ島でできていて海岸線が多い。
波の少ない内海では、ハーバーも多く、色とりどりの船が揺れている。
訪れた晩秋の芝生の色と、琵琶湖のみどり。なるほど似ているかもしれない。

小さなヨットに乗り込んで沖に出る。

この日は珍しいほど風がなく、なかなか船は進まない。
息子は眠たいのと、スピードが出ないヨットに機嫌を損ね、 何やら文句を言い続けて、ぱたりと眠ってしまった。

静かだった。
とても静かだった。
湖上で、ぼんやり空を見上げて、からっぽになった。

素敵な週末の過ごし方。
来店いただくお客様の話も面白く、
ついつい、あれもこれも始めたくなる。

2013年11月 服部 真貴 

北の椅子と 便り

北の椅子と 便り 201310

店の閉店作業をバタバタと済ませ、この冬3歳になる息子を保育園へ迎えに行く。
保育園の前まではお客様とのやり取りや、夜の仕事の段取りをあれこれ考え、 まだまだ仕事の緊張が身体全体を包んでいる。
けれども、保育園の門をくぐると、不思議なことに、肩の力が抜ける。
子どもたちのよいにおいを深呼吸する。
今日の遊びの名残を見て、目じりが垂れる。

じっくりと遊んでいる。
安心で美味しいお昼を食べている。
心を許す人に見守られている。

当たり前のようにも思えるけれど、とても難しく、ありがたいこと。
そのことが、私たちの店つくりにも大きく反映されている。

先日、夕方の園庭にだれが作ったか、きれいなお弁当箱をみつけた。
翌日から、息子の靴箱にはサラ砂の詰まったお弁当箱が入っている。
上にのせる葉や花は日替わりで。
保育園では年上のお姉さんたちに、分けてもらう。
家の近所でも集めている。
ご近所さんの軒先で「おばちゃーん、これもらってもいい?」と声を張る。
ついでに花の名も教わることとなる。

学生時代に、子どもは遊びから様々なことを学び育っていくことをきいた。
子どもだけではなく、人は興味を持ったことほど学びが大きい。
当然のことだけれども。
でも、はたしてその興味に対して、じっくり取り組めているか。
細切れの時を過ごしすぎてはいないかと、反省する。

秋は夜長。 「じっくり」 に良い季節。
私ももう一度基本に立ち返り、家具についてお勉強。
イージーチェアーに身を任せて。
本を開くが早いか、まぶたが落ちるのが早いか・・・。

2013年10月 服部 真貴 

北の椅子と 便り

北の椅子と 便り 201309

遅れに遅れたコンテナが、ようやく到着しました。
当日は朝6時にコンテナを迎え、荷を下ろして、検品し、品番を付け、店頭や倉庫へ運び入れ。 夜遅くまで作業が続きます。
そんな中感じるのはやはりマンパワー。
今回集まった荷下ろしスタッフは全員女子。
小柄な細い腕から、ちからこぶがムムムとあらわれます。
てきぱきと指示を出す者、重たすぎる家具に苦笑いしながら踏ん張る者、検品に余念のないきらりとした目を持つ者。
当日までの準備や、ともに店を営むMillは神戸北店を営業しながらなので店を一手に守る者。
一人ひとりが、持てる力を発揮して一つの物ごとに向かう姿に、小学6年生の時に取り組んだ、組体操を思い出したりして。
もちろん、この日届いた品とは、販売、そしてアフターケアまでまだ長い道のりをともに歩むのですが、二日間にわたるコンテナおろし、作業の後の達成感は、やはり組体操を終え、控えの場所に戻ってみんなで笑いあうあの感じに、似ています。

店の前の無花果が熟し、毎日鳥たちがにぎやかです。

吹く風がすこし爽やかになりました。
クーラーを入れていても暑かった、北の椅子との倉庫店舗。
随分過ごしやすくなっています。
どうぞ皆様、ちょっとカフェでお茶でも。そして是非、新しく届いた品々をご覧ください。

2013年9月 服部 真貴 

北の椅子と 便り

北の椅子と 便り 201308

店を開けて2か月が経ち、ようやく「いらっしゃいませ」の声が力まなくなりました。気がつけば、この場所に店を開こうと決心して1年が過ぎました。

子どものころから通った製材所は、継ぎ接ぎだらけのおんぼろで映画セットのようだった。
以前は製材所の前の運河には丸太がずらりと浮いていて、クレーンで上げて、トロッコで引いて、大きな音とともに丸太が割られていく日常があった。
それも昔のこととなり、材木が製品となって流通するようになった今、運河には魚が泳ぎ、製材所はすっかり静かになった。

その製材所を改装して店を開いた、「北の椅子と」 
お客様にはよく、「と」ってなんですか? と尋ねられます。
北欧の椅子と 暮らしてみると、素敵でしょ?
北の椅子と ○○さんが交わるとこんなになるよ。
北の椅子と 机要りませんか?
北の椅子と 和田岬って意外とよく似合っているんです。
・・・・・
と、の続きは限りなく、また、と、の続きは北の椅子とにかかわるすべての人に変化させてほしいと願いながら。

開けて2か月。
改装に尽力いただいた方々によって、メンテナンスに汗を流したり、美味しい料理を作ってくれるスタッフによって、そしてお客様によって、
早くもたくさんの と の続きができている。
どうぞ皆様 「北の椅子と」 よろしくお願いいたします。

2013年8月 服部 真貴